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日替わりコメント写真集

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「じゅぽんのつぶやき」『九話』

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第九話

前回までのあらすじ

「じゅぽん」という、小狸がつぶやく、一家と「樹囁庵」の物語。

「じゅぽん」は、親父が聞かせてくれた「じっちゃん」の若き日の活躍を、床に入って思い出していた。
後に皆から「明神騒動」と呼ばれる、狐一族との争いである。ボクは、益々興奮して、親父が話してくれたことを一つ一つ思いかえしていた。「サブ」(じっちゃん)が指揮して、いよいよ戦いの当夜の思い出を回想していた。

第九話

 益々、目が冴えてきた「じゅぽん」は、親父の話をつぎから次へと、思い出していた。

決戦の当日は、満月が東の山から昇り始めた頃から、少し雲が出始めていたそうです。
風も吹き始め、辺りの木々は、ざわざわと揺れていたようでした。
 
狐たちは、気配を察したのか、灯りを消して、静かに、炭焼き窯跡へと近づいてきたそうです。
満月が丁度、雲間から姿をだしてきたので、灯りを消した狐たちの動きは、まるで、真昼間のように、狸たちには、分かっていたということでした。

狐たちの目が、月光にきらきらと光って、「ここにいるぞー」と知らせているようだったと、言っていました。

狐の一族は、「ゴン」を先頭に、用心深くゆっくりとあたりの気配に注意しながら、一歩一歩と炭焼き窯に近づいてきました。
そして、「ゴン」は、炭焼き窯の向こうに、狸の尻尾が沢山でているのを見つけ、「しーっ」と皆を静止させ、「おい、誰か居るのなら出てこい」と、恐る恐る声をだしたそうです。

返事は、帰って来ません。そこで「ゴン」は、「お前らの尻尾は、こちらに丸見えじゃ。そっちがその気なら、こちらから攻めてやるわい」と、狐一族に「行けーーっ」と合図した。

小高い炭焼き窯の天井に攀じ登った一族は、次の瞬間、うしろ側の窯の炬口から、途方もない、大きな音に驚かされる。空き缶が数珠のように、釜口から引きずりだされた音だった。

びくついていた狐たちは、われ先にと、音がした反対側へと、逃げ足すばやく、駆け下りた。
異様な声を出しながら、まるで転げ落ちるように、団子になって進んだ。
とそこには、枯草で覆っていた堀溜があった。
将棋倒しのように、先のものから、どんどん堀に入り込んで行ったと言うことです。

 その堀には、油が一杯、張っていて、あの刺刺しい「タラノ木」も浮かんでいたのですから、落ち込んだ狐たちは、悲鳴を上げながら、縁によじ登ろうとするのですが、掴むものは、全て自分の手に付いた油でつるつる滑って、どうすることもできず、おまけに、もがけばもがくほど、タラノ木の刺が、全身をちくちく刺して、油の池で、じっとしているほかはなかったということだったようです。

 それに加えて、今度は上から、タラノ木の束が降って来たのですから狐たちは、大混乱、仲間同士がケンカを始めるなど、もう「ゴン」の指図など聞くどころではありませんでした。

 こうして、狐たちは、「「サブロウ」わしらが悪かった。今後一切、無体なことは言わんから、助けてくれ」と「ゴン」が言うので、心良く、じっちゃんたちは助けてやったということです。そして、戦いは終わったのでした。

つぶやき終えた「じゅぽん」の手のひらにも、脂汗が滲んでいました。
とうとう、東の空が明るくなってきていました。

そうじゃ、今日は、皆で「クリノキサコ」へ、じっちゃんを迎えに行く、大事な用があるのだ。
 そう言うと「じゅぽん」は、うとうとして少し寝たようです。

で、この続きは、第十話でつぶやくことにいたします。





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